⚖️ 規制・税制 2026年7月6日

ステーブルコイン発行に必要なライセンスとは|資金決済法・電子決済手段の制度整理

公開: 2026年7月6日 読了目安 約6分

エグゼクティブサマリー

  • 日本では法定通貨連動型ステーブルコインは資金決済法上の「電子決済手段」と整理され、発行できる主体は銀行・資金移動業者・信託会社等に限られています(2026年7月時点)
  • 流通・仲介を担うには2023年6月施行の改正資金決済法で新設された「電子決済手段等取引業」の登録が必要です
  • 発行と仲介は役割分担が可能。自社で発行ライセンスを取得せず、既存の電子決済手段を活用・仲介する参入形態が多くの企業にとって現実的な選択肢です
  • 2026年6月1日には「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」が新設されるなど制度は動いており、検討時点の最新情報の確認が不可欠です
この記事の目次
  1. ステーブルコイン発行のライセンスは資金決済法で定まる
  2. 発行者になれるのは銀行・資金移動業者・信託会社等
  3. 流通・仲介を担う「電子決済手段等取引業」の登録
  4. 発行と仲介の役割分担:制度が想定する構造
  5. 参入形態の比較:自社発行・既存活用・仲介参入
  6. 法改正の動向:2026年に制度はさらに更新

「ステーブルコインを発行するには、どんなライセンスが必要なのか」——上司や経営会議からこう問われた担当者がまず押さえるべきなのは、日本ではステーブルコインが資金決済法上の電子決済手段(法定通貨の価値と連動し、決済に使えるデジタルな支払手段)として制度化されている、という出発点です。本記事では、発行者になれる主体、仲介・流通に必要な登録、そして企業の参入形態の選択肢を、2026年7月時点の制度に基づいて整理します。

ステーブルコイン発行のライセンスは資金決済法で定まる

日本では2023年6月1日に改正資金決済法が施行され、法定通貨連動型のステーブルコインは「電子決済手段」という法律上のカテゴリーに位置づけられました。金融庁も、法定通貨の価値と連動するいわゆるステーブルコインの発行・仲介を、資金決済法・銀行法に基づく規制の対象として整理しています。

ここで重要なのは、制度が**「発行」と「仲介・流通」を別の役割として設計している**ことです。発行者に求められる資格と、流通を担う事業者に求められる登録は別物であり、企業が参入を検討する際も「自社はどちら側に立つのか」で必要な手続きが変わります。

💡 ポイント

日本の制度は「価値の裏付けを守る発行者」と「利用者との接点を担う仲介者」を分離した設計です。自社がどちらの役割を担うかを最初に決めることが、ライセンス検討の出発点になります。

なお、ステーブルコインそのものの仕組みや種類についてはステーブルコインの基礎で整理しています。

発行者になれるのは銀行・資金移動業者・信託会社等

電子決済手段の発行者になれる主体は、利用者の資金を確実に保全できる規制業種に限定されています。2026年7月時点では、次の3類型が発行ルートと整理されています。

発行類型発行主体仕組みの概要特徴
預金型銀行預金債権をデジタル化して移転可能にする銀行の信用力を背景にできる一方、参入は銀行に限られる
資金移動業型資金移動業者送金サービスの未達債務として発行銀行以外の事業者が発行者になれる現実的なルート
信託型信託会社・信託銀行利用者の資金を信託し、受益権をデジタル化(特定信託受益権)発行体と資産保全を信託の仕組みで分離できる

一般の事業会社がこのいずれにも該当しない場合、自社単独で発行者になることはできません。実務上は、(1)資金移動業の登録を自ら取得する、(2)信託会社等と連携して信託型のスキームに乗る、という2つの検討ルートが中心になります。国内では信託型のプラットフォームや、資金移動業型の円建てステーブルコインの取り組みが先行しており、具体的な動きは国内の先行事例で紹介しています。

流通・仲介を担う「電子決済手段等取引業」の登録

発行されたステーブルコインの売買・交換・管理や、利用者への提供を業として行うには、資金決済法に基づく電子決済手段等取引業の登録が必要と整理されています。金融庁は2023年6月1日からこの登録制度の運用を開始しており、登録申請の窓口・様式も公表しています。

登録業者には、金融庁の事務ガイドライン(第三分冊17「電子決済手段等取引業者関係」)に沿って、次のような態勢整備が求められます。

  • マネー・ローンダリング対策(取引時確認等の措置)
  • 利用者が預託した金銭・電子決済手段の分別管理
  • 発行者等との契約締結義務
  • システムリスク管理・不正取引に対する補償方針

⚠️ ここに注意

登録なしに電子決済手段の売買・仲介等を業として行うことは資金決済法違反となり得ます。また、取引先やパートナー候補が国内で必要な登録を受けているかは、金融庁が公表する登録業者一覧で確認できます。無登録業者との連携はコンプライアンス上の重大なリスクです。

発行と仲介の役割分担:制度が想定する構造

この制度設計を企業目線で読み替えると、次のような分業構造になります。

1
発行者(銀行・資金移動業者・信託会社等)裏付け資産を保全し、電子決済手段を発行・償還する。
2
電子決済手段等取引業者発行者と契約を結び、売買・交換・管理など利用者との接点を担う。
3
利用企業登録業者を通じて電子決済手段を取得し、決済・送金等に利用する。

自社の決済や送金にステーブルコインを「使う」だけの企業は、この構造の3番目に位置し、一般に登録は不要と整理されています。一方、自社の顧客にステーブルコインを提供・仲介するビジネスを構想している場合は、2番目の登録が視野に入ります。

参入形態の比較:自社発行・既存活用・仲介参入

ライセンスの全体像を踏まえると、企業の参入形態は大きく3つに整理できます。

参入形態必要なライセンス・登録初期負担向いている企業
自社発行資金移動業の登録、または信託会社等との連携スキーム大(態勢整備・審査対応)決済・送金を本業に据える企業、金融グループ
既存ステーブルコイン活用原則不要(利用者の立場)BtoB決済・海外送金の効率化が目的の事業会社
仲介参入電子決済手段等取引業の登録中〜大顧客接点を持つ金融・IT事業者

多くの事業会社にとって、最初の一歩は「既存ステーブルコイン活用」です。発行ライセンスの取得は年単位の準備を要する一方、利用者としての活用は登録不要で始められる可能性が高いためです。具体的な検討の進め方は企業がステーブルコイン導入を検討する実務ステップで解説しています。

法改正の動向:2026年に制度はさらに更新

この分野の制度は現在も更新が続いています。令和7年(2025年)に資金決済法の改正が成立し、関連する政令・内閣府令が2026年5月22日に公布、同年6月1日に施行されました。主な変更点は次のように整理されています。

  • 「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の新設:電子決済手段等取引業者等の委託を受けて媒介を行う、より参入しやすい登録区分が2026年6月1日から始まりました
  • 信託型の裏付け資産要件の見直し:信託型ステーブルコインの裏付け資産の運用について、要件を定める整備が行われました
  • 国内保有資産の範囲の具体化など、その他の規定整備

制度の細部は今後も改正される可能性があるため、本記事の整理はあくまで2026年7月時点のものです。実際の参入判断にあたっては、金融庁の最新の公表資料と専門家の確認を前提にしてください。用語の意味を確認したい場合は用語集もあわせてご覧ください。

よくある質問

一般の事業会社がステーブルコインを発行することはできますか?

2026年7月時点の資金決済法では、法定通貨連動型ステーブルコイン(電子決済手段)の発行者になれるのは銀行・資金移動業者・信託会社等と整理されています。一般の事業会社がそのまま発行者になることはできず、資金移動業の登録を取得するか、信託会社等と組んで発行する形が検討ルートになります。

ステーブルコインを販売・仲介するだけでもライセンスは必要ですか?

電子決済手段の売買・交換・管理などを業として行う場合は「電子決済手段等取引業」の登録が必要と整理されています。自社サービスへの組み込み方によって該当性が変わるため、事業設計の段階で法務確認が必要です。

自社はステーブルコインを決済に使うだけですが、登録は必要ですか?

自社の支払い・受け取りに利用するだけの「利用者」の立場であれば、電子決済手段等取引業の登録は一般に不要と整理されています。ただしサービスの提供形態によっては該当し得るため、スキーム確定前に専門家への確認をおすすめします。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。