🏦 国内外の事例 2026年7月20日 更新

ステーブルコイン国内事例まとめ|JPYCの企業導入・3メガバンク・Progmatに見る「導入の型」

公開: 2026年7月9日 更新: 2026年7月20日 読了目安 約7分

エグゼクティブサマリー

  • JPYC株式会社は2025年8月18日に資金移動業者の登録を取得し、同年10月27日に円建てステーブルコイン「JPYC」の発行を開始(資金移動業型では国内初)
  • 物流大手AZ-COM丸和ホールディングスが協力会社約2,300社への支払いにJPYCを導入する方針と2026年7月に報道され、国内初の大規模な法人利用となる見通し
  • ローソン・KDDI・HashPortは2026年8月から、ローソン高輪ゲートウェイシティ店で円建てステーブルコインの店頭決済の技術実証を実施すると発表
  • 三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクは信託型ステーブルコインの共同発行に向けて協議会を設置し、2026年度中の実取引開始を目指すと発表
  • 国内事例は「資金移動業型(パブリックチェーン・企業間の支払い)」と「信託型(銀行系・大口決済向け)」の2つの型に大別して読むと整理しやすい
この記事の目次
  1. ステーブルコインの国内事例は「発行ルート」で整理すると分かりやすい
  2. JPYC:国内初の資金移動業型・円建てステーブルコイン
  3. 企業の導入事例:物流大手AZ-COM丸和HDと小売の実証
  4. Progmat:三菱UFJ信託銀行系の「信託型」発行基盤
  5. 3メガバンク:信託型ステーブルコインの共同発行構想
  6. 事例から見える「導入の型」:ライセンス×用途で読む

「ステーブルコインの国内事例を集めて報告しろと言われたが、何がどこまで実際に動いているのか分からない」——本記事はそのような企業担当者に向けて、国内のステーブルコイン発行・導入の主要事例を公式発表・大手報道ベースで整理し、そこから見える「導入の型」を分析します。2026年7月時点で実在確認できた事実のみを扱い、憶測は含めません。

ステーブルコインの国内事例は「発行ルート」で整理すると分かりやすい

国内のステーブルコイン事例を追う前に、前提を1つだけ押さえます。日本では2023年6月施行の改正資金決済法により、法定通貨に価値が連動するステーブルコインは「電子決済手段」として制度化されており、発行できる主体は銀行・資金移動業者・信託会社等に限定されると整理されています。つまり国内の事例は、必ずこのいずれかの発行ルートの上に乗っています。

発行ルート発行主体代表例(2026年7月時点)
資金移動業型資金移動業の登録を受けた事業者JPYC(JPYC株式会社)
信託型信託銀行等(受託者として発行)Progmat基盤の各構想・3メガバンク共同発行構想
銀行型銀行各行で検討段階

この「どのライセンスで発行されているか」が、後述するとおり利用シーンの違いに直結します。ライセンス区分の法的な詳細は資金決済法とライセンス区分の解説で扱っているため、本記事は事例そのものに集中します。

JPYC:国内初の資金移動業型・円建てステーブルコイン

国内事例の筆頭がJPYCです。JPYC株式会社は2025年8月18日付で資金決済法に基づく資金移動業者の登録(関東財務局長第00099号)を取得しました。同社の公式発表によれば、これは日本円と1対1で連動する電子決済手段を発行できる資金移動業者としては国内初です。

そして2025年10月27日、円建てステーブルコイン「JPYC」の発行が正式に始まりました。Ethereum・Avalanche・Polygonという3つのパブリックチェーン(誰でも参加できるブロックチェーン)上で発行され、専用プラットフォーム「JPYC EX」を通じて日本円との発行・償還(JPYCを日本円に戻すこと)が提供されています。

💡 ポイント

JPYCは法制度上「電子決済手段」であり、ビットコインのような「暗号資産」とは異なる区分です。1JPYC=1円で価値が固定されるため、価格変動を前提としない企業の支払い・送金手段として設計されています。同社はそれ以前は前払式支払手段「JPYC Prepaid」を発行していましたが、こちらは2025年6月に新規発行を終了しており、現在の主軸は資金移動業型のJPYCです。

企業の導入事例:物流大手AZ-COM丸和HDと小売の実証

発行が始まったことで、2026年に入り「使う側」の企業事例が出始めました。

AZ-COM丸和ホールディングス:協力会社約2,300社への支払いに導入方針

2026年7月、Amazonの配送などEC物流を手がける東証プライム上場のAZ-COM丸和ホールディングスが、協力会社約2,300社への支払いにJPYCを導入する方針であることが日本経済新聞などで報じられました。報道によれば、JPYCの大規模な法人利用としては国内初となる見通しで、同社はJPYC株式会社との業務提携と10億円規模の出資も検討しているとされています。

注目すべきは用途です。投機ではなく、多数の運送協力会社・ドライバーへの支払いという、物流企業の根幹業務にステーブルコインを組み込む構想です。銀行振込に比べ、24時間365日の即時送金と手数料の圧縮が期待できる領域であり、「支払い先が多く・頻度が高い」業種ほど効果が出やすいという構図を示す事例といえます。

ローソン×KDDI×HashPort:店頭決済の技術実証

小売の店頭でも動きがあります。ウォレット事業者のHashPortは2026年7月13日、KDDI・ローソンと連携し、ローソン高輪ゲートウェイシティ店(東京・港)で日本円ステーブルコインによる店頭決済の技術実証を2026年8月に実施すると発表しました。POSシステムとの連携要件、レジオペレーション、決済所要時間などを検証するもので、対象は3社の関係者に限定した技術検証段階です。

⚠️ ここに注意

AZ-COM丸和の導入は2026年7月時点で「方針・検討」の段階を含む報道ベースであり、ローソンの取り組みも関係者限定の技術実証です。「国内では既に一般消費者がどこでもステーブルコインで支払える」段階ではありません。社内報告では「発行は開始済み・大規模な企業利用はこれから立ち上がる初期段階」と正確に伝えることをおすすめします。

Progmat:三菱UFJ信託銀行系の「信託型」発行基盤

発行ルートのもう一方、信託型の代表格がProgmat(プログマ)です。Progmatは三菱UFJ信託銀行から生まれた会社で、“1coin=1円”で価値が固定されたステーブルコインを信託の仕組みで発行・管理する基盤「Progmat Coin」を提供しています。信託型は、裏付け資産(利用者から預かった円)を信託銀行等が受託者として管理するため、発行者が破綻しても裏付け資産が保全される倒産隔離が働くと整理されています。

Progmatを軸にした動きとして、2023年11月には三菱UFJ信託銀行・Progmat・JPYCの3社が、Progmat Coin基盤を用いた信託型ステーブルコインの発行に向けた共同検討を開始すると公表しています。資金移動業型のJPYCと信託型の基盤が対立ではなく連携している点は、国内の事例を読むうえで押さえておきたい構図です。

3メガバンク:信託型ステーブルコインの共同発行構想

2026年の国内最大のニュースが、メガバンクの参入です。三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の3行は2026年6月10日、ステーブルコインの共同発行に向けて協議会を設置し、2026年度中の実取引開始を目指すと発表しました。報道によれば3行は2025年11月から金融庁と連携した実証実験を重ねており、方式は3行が共同委託者、信託銀行等が受託者(発行体)となる信託型で、裏付け資産は倒産隔離により100%保護される設計とされています。

銀行が発行体側に立つことで、企業間の大口決済や証券決済など、これまで銀行振込が担ってきた領域での利用が視野に入ります。スタートアップ発のJPYCとメガバンク連合の信託型が並走する構図は、企業にとって「選択肢が複数ある市場」が立ち上がりつつあることを意味します。

事例から見える「導入の型」:ライセンス×用途で読む

ここまでの事例を「どのライセンスで発行され、何に使われているか」で整理すると、2026年7月時点の国内の型は次の2つに大別できます。

🚀 資金移動業型(JPYC型)

  • 発行者:資金移動業者(スタートアップ発)
  • チェーン:パブリックチェーン中心
  • 用途:多数の取引先への支払い・店頭決済の実証
  • 事例:AZ-COM丸和の導入方針・ローソン実証
  • 特徴:立ち上がりが速く、企業が「利用者」として参加しやすい

🏦 信託型(Progmat・3メガ型)

  • 発行者:信託銀行等が受託者(銀行系主導)
  • チェーン:用途に応じて設計
  • 用途:大口の企業間決済・証券決済などを想定
  • 事例:Progmat Coin基盤・3メガバンク共同発行構想
  • 特徴:倒産隔離による保全を重視・実取引はこれから

導入を検討する企業の立場では、「自社はどちらの型の利用者になりうるか」という問いに置き換えられます。支払い先が多く高頻度の支払いがある企業は資金移動業型の事例が、大口決済や金融取引に近い企業は信託型の動向が、それぞれ参照点になります。ステーブルコインそのものの仕組みから確認したい場合はステーブルコインの企業向け基礎解説を、海外企業の先行事例は海外企業のステーブルコイン活用事例を参照してください。

なお、本記事の内容は2026年7月時点の公式発表・報道に基づく整理です。各社の計画は変更される可能性があり、個別の導入判断にあたっては最新の一次情報と専門家の確認を推奨します。

よくある質問

日本国内で実際に使えるステーブルコインはありますか?

2026年7月時点では、JPYC株式会社が2025年10月27日に発行を開始した円建てステーブルコイン「JPYC」が、資金移動業型の電子決済手段として発行・償還されています。また、三菱UFJ信託銀行系のProgmatが信託型の発行基盤を提供しており、3メガバンクも2026年度中の実取引開始を目指す共同発行構想を発表しています。

JPYCを導入した企業にはどんな事例がありますか?

2026年7月の報道によれば、物流大手のAZ-COM丸和ホールディングスが協力会社約2,300社への支払いにJPYCを導入する方針で、国内初の大規模な法人利用となる見通しです。また、ローソン・KDDI・HashPortが2026年8月から店頭決済の技術実証を行うと発表しています。

資金移動業型と信託型のステーブルコインは何が違いますか?

発行者のライセンスが異なります。資金移動業型は資金移動業者が発行するもので、JPYCが該当します。信託型は信託銀行等が受託者となり、裏付け資産が信託の倒産隔離機能で保全される形と整理されており、Progmat基盤や3メガバンクの構想が該当します。どちらも改正資金決済法上の「電子決済手段」です。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。