🏦 国内外の事例 2026年7月15日

ステーブルコイン海外企業事例|Stripe・PayPalの決済導入とGENIUS法後の動き・日本企業への示唆

公開: 2026年7月15日 読了目安 約7分

エグゼクティブサマリー

  • Stripeは2025年2月にステーブルコイン基盤Bridgeを約11億ドルで買収完了(同社最大の買収)。同年5月には101カ国の企業向けにステーブルコイン残高を保有・送受金できる法人口座を発表
  • PayPalは2024年9月に自社ステーブルコインPYUSDでEYへの請求書支払いを実行(同社初の企業間決済)。2026年には世界70市場の利用者へPYUSDを展開すると発表
  • 米国では2025年7月18日にステーブルコインの連邦規制枠組みを定めるGENIUS法が成立。準備資産の裏付けやマネロン対策義務が明文化され、企業採用の前提が整った
  • WSJは2025年6月、WalmartやAmazonが自社ステーブルコインの発行を検討していると報道。決済インフラ企業から一般企業へ検討の裾野が拡大
  • 海外事例の型は「決済インフラ提供型」「クロスボーダー決済・トレジャリー活用型」「自社発行検討型」の3つに整理でき、日本企業にまず関係するのは受け取り・支払い側の対応
この記事の目次
  1. ステーブルコインの海外企業事例は「決済インフラ企業」が先行している
  2. Stripe:11億ドルのBridge買収とステーブルコイン法人口座
  3. PayPal:PYUSDによる企業間決済とクロスボーダー展開
  4. 米GENIUS法:企業採用を後押しした規制の明文化
  5. 海外事例から見える3つの「活用の型」
  6. 日本企業への示唆:まず「受け取る側・支払う側」として論点整理を

「海外ではステーブルコインが実際に企業決済で使われているのか。使われているなら、どの企業が何に使っているのか」——本記事はこの問いに、公式発表と大手報道で実在確認できた事実のみで答えます。対象は米国を中心とする海外企業の活用事例と、企業採用を後押しした規制動向(GENIUS法)、そして日本企業への示唆です。2026年7月時点の整理であり、投資や価格の話は扱いません。

ステーブルコインの海外企業事例は「決済インフラ企業」が先行している

はじめに全体像です。海外企業のステーブルコイン活用は、消費者向けの流行としてではなく、StripeやPayPalといった決済インフラ企業が法人向け機能として組み込む形で本格化しました。彼らの顧客である一般企業は、既存の決済サービスの延長でステーブルコインを使い始められるため、「インフラ側の対応→利用企業の拡大→大手企業の自社発行検討」という順に裾野が広がっています。以下、この順で事例を見ていきます。

Stripe:11億ドルのBridge買収とステーブルコイン法人口座

オンライン決済大手のStripeは、海外事例の中で最も踏み込んだ投資をした企業です。同社は2025年2月、ステーブルコインの発行・送金基盤を提供するBridge社の買収を完了しました。買収額は約11億ドルと報じられており、Stripe史上最大の買収です。

買収からわずか3カ月後の2025年5月、Stripeは「ステーブルコイン・ファイナンシャル・アカウント」を発表しました。101カ国の企業が、ドル建てステーブルコイン(USDCおよびBridgeのUSDB)の残高を口座として保有し、暗号資産のネットワークとACH・SEPAといった既存の銀行決済網の両方で入出金できるという法人向けサービスです。銀行口座の維持が難しい国や、ドル調達コストが高い国の企業でも、ドル建ての価値を保有・送金できる点が訴求されています。あわせてBridgeはVisaと提携し、ステーブルコイン残高から直接支払えるカード発行の仕組みも発表しました。加盟店側は通常のカード決済と同様に自国通貨で受け取れる設計です。

💡 ポイント

Stripeの事例が示すのは「利用企業はブロックチェーンを意識しなくてよい」段階に入ったことです。企業から見れば、使い慣れた決済サービスの管理画面に「ステーブルコイン建ての残高・送金」という選択肢が増えた形であり、導入のハードルは専用システムの構築から大きく下がっています。

PayPal:PYUSDによる企業間決済とクロスボーダー展開

PayPalは決済大手として初めて自社ステーブルコイン「PYUSD(PayPal USD)」を発行した企業です。企業実務の観点で重要な実績が2つあります。

1つめは企業間決済(B2B)の実行です。Bloombergの報道によれば、PayPalは2024年9月23日、会計事務所EY(Ernst & Young LLP)への請求書支払いをPYUSDで実行しました。SAPの「デジタル通貨ハブ」を通じて基幹システム(ERP)から支払われたもので、同社初のステーブルコインによる企業間取引です。請求書の支払いという日常的な経理業務が、銀行の営業時間に縛られず数分で完結することを大手企業間で実証した事例といえます。

2つめはクロスボーダー展開です。PayPalは2025年6月にPYUSDをStellarネットワークへ展開する計画(ニューヨーク州金融サービス局の承認前提)を発表し、2026年には世界70市場の利用者がPayPalアカウント上でPYUSDを保有・送受金できるようにすると公式発表しました。同社はこの狙いを「海外送金の低コスト化と、企業の決済回収の高速化」と説明しています。

米GENIUS法:企業採用を後押しした規制の明文化

こうした企業側の動きを加速させたのが、米国の規制整備です。2025年7月18日、決済用ステーブルコインの連邦規制枠組みを定める「GENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)」が成立しました。ホワイトハウスの公表資料によれば、同法は発行者に対して準備資産の裏付けを求め、銀行秘密法(マネロン対策の枠組み)の適用対象であることを明確化しています。

企業採用への影響は「不確実性の除去」に尽きます。それまで米国では、ステーブルコインを事業に組み込むこと自体の規制上の位置づけが州ごと・当局ごとに揺れていました。連邦法でルールが明文化されたことで、上場企業がステーブルコインを扱う際の社内承認・監査対応の前提が整ったと整理されています。

実際、規制整備の進展と並行して検討の裾野は広がっています。The Wall Street Journalは2025年6月、WalmartやAmazonを含む大手企業が自社ステーブルコインの発行を検討していると報じました。カード手数料の削減や決済の高速化が動機とされます。これは報道段階の情報であり両社の公式発表ではありませんが、「決済インフラ企業の道具」だったステーブルコインが、一般事業会社の経営アジェンダに載ったことを示すシグナルとして押さえておく価値があります。

海外事例から見える3つの「活用の型」

ここまでの事例を、企業の関わり方で整理すると次の3つの型に分かれます。

🏗️ 決済インフラ提供型

  • 主体:Stripe・PayPal等の決済事業者
  • 動き:買収・自社発行で機能を内製化
  • 顧客企業に「使える形」で提供
  • 2026年7月時点で最も実装が進む

🌏 クロスボーダー決済・トレジャリー活用型

  • 主体:海外取引・海外子会社を持つ一般企業
  • 動き:請求書支払い・国際送金・資金管理に利用
  • PayPal→EYの請求書支払いが代表例
  • 着金日数と手数料の圧縮が動機

🏪 自社発行検討型

  • 主体:Walmart・Amazon等の大手小売(報道ベース)
  • 動き:自社ステーブルコイン発行の検討
  • カード手数料削減が動機とされる
  • 2026年7月時点では検討段階の報道のみ

日本企業への示唆:まず「受け取る側・支払う側」として論点整理を

海外の動きは、日本企業には主に取引の相手方経由で波及します。検討しておきたい論点は次のとおりです。

第一に、海外取引先からの受け取り対応です。 取引先がStripeやPayPal経由でステーブルコイン建ての支払いを標準化していくと、日本側が「受け取れるか」を問われる場面が想定されます。日本ではステーブルコインは電子決済手段として規制されており、その売買・交換・管理を業として担うには登録が必要と整理されています。自社が直接扱うのか、国内の登録事業者を介するのかで必要な整理が変わるため、資金決済法とライセンス区分の解説を踏まえて法務部門と確認するのが出発点です。

第二に、海外子会社経由の活用という選択肢です。 米国など制度が明文化された国に子会社を持つ企業では、現地法人が現地ルールの下でステーブルコイン建ての決済・資金管理を行い、日本本社は円建ての既存スキームを維持するという役割分担が論点になります。この場合も、グループとしての会計処理・税務・為替管理の整理が先に必要です。

第三に、国内事例との突き合わせです。 国内でもJPYCの発行開始や物流大手の導入方針など、海外と同じ「支払い業務への組み込み」の型が立ち上がりつつあります。海外事例を自社に引き付ける際は、国内のステーブルコイン事例整理と併せて読み、日本の制度の上で成立する形に置き換えて検討してください。全体の進め方はステーブルコイン導入のステップ解説で扱っています。

⚠️ ここに注意

海外事例を調べる過程で、日本の登録を受けていない海外の取引所・交換業者のサービスに行き着くことがありますが、無登録業者が日本居住者向けに営業することは法令違反であり、金融庁も注意喚起を行っています。海外事例の参照と、海外業者のサービスを日本から利用することは別問題です。実務の検討は必ず国内の登録事業者・専門家を通じて行ってください。

なお、本記事は2026年7月時点の公式発表・報道に基づく整理です。各社のサービス内容・提供地域は変更される可能性があり、規制の適用関係を含む個別判断は弁護士等の専門家にご確認ください。

よくある質問

海外ではステーブルコインはどんな企業が使っていますか?

決済インフラ企業の対応が先行しています。Stripeは2025年にステーブルコイン基盤Bridgeを買収し101カ国で法人向けステーブルコイン口座を発表、PayPalは自社ステーブルコインPYUSDで企業間の請求書支払いを実行しました。報道ベースではWalmartやAmazonなど大手小売も自社発行を検討しているとされています。

GENIUS法とは何ですか?企業にどう影響しますか?

2025年7月18日に米国で成立した、決済用ステーブルコインの連邦規制枠組みを定める法律です。発行者に準備資産の裏付けやマネロン対策義務を課すもので、ルールが明文化されたことで米国企業がステーブルコインを事業に組み込む際の法的不確実性が下がったと整理されています。

日本企業が海外取引でステーブルコインを受け取ることはできますか?

制度上の論点整理が必要です。日本ではステーブルコインは「電子決済手段」として規制されており、国内でその売買・交換・管理を業として担うには登録が必要と整理されています。受け取りスキームは国内の登録事業者の関与形態によって変わるため、実行前に法務部門・専門家との確認が必要です。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。